天鳳堂資料室

ひな人形は和装の絹製品と
同様に扱って下さい。

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雛人形の保存・保管

■はじめに

以下、絹が多く使われる高級ひな人形の取扱い解説です。

商品の素材や特性によっては、以下に書かれてあることと異なる取扱いが推奨される場合があります。取扱説明書やお店の方の指導を優先させて下さい。

■まとめ

■基本は絹製品の扱いと同じです。

高級ひな人形で多く使われる素材はです。衣装は勿論、髪の毛も絹でできています。

絹は非常にデリケートな素材です。「生き物」に例えられるように、吸湿性・通気性に優れている一方、害虫やカビがつきやすいという面も持っています。そのため、雛人形の保管では、絹の扱いが非常に重要なポイントとなります。

絹製品の保管の要点をあげると以下の点に集約されます。

  1. 紫外線に気をつける
  2. 湿気に気をつける
  3. 害虫に気をつける

紫外線は絹のタンパク質に作用して変色させます。保管の時に限らず、飾っているときも日光が長時間、直接当たらないよう気をつけて下さい。

湿気と害虫については、以下で解説します。

■高温高湿に気をつける。

湿気は人形には良い影響はあたえません。

湿気そのものも変色や黄ばみといった影響をあたえますが、湿気が引き起こす副次的な事象が人形に直接かつ深刻な物理的ダメージを与えます。

・カビ … 湿気はカビの繁殖を助けます。 →シミや変色の原因
・害虫 … 湿気は虫の住みやすい環境を作ります。 →虫食いの原因

カビにしろ、害虫にしろ、一番快適な環境は高温・高湿の場所です。

逆に言うと、高温・高湿にさえしなければ、かなりの程度の防御ができるということです。


ところで、湿気を遮断するだけなら、ビニール袋やプラスチックボックスなどで密閉するのが簡単で確実です。しかし、これには問題があります。絹の「吸湿性と放湿性」という性質のためです。湿気の話は、単に空気中の水分に限ったものではなく、絹が吸った水分まで含めて考えるべきです。

学校の運動会などで使われるテントがあります。雨よけのために周りを透明のビニールで囲むことがありますが、その中にいると短時間ですぐビニールが曇ったり、蒸し暑くなったりします。これと同じ理屈です。中の水分が逃げていかないのです。

後の項で触れますが、密閉それ自体の問題ではなく、密閉する素材の問題です。ビニールやプラスチックボックスは水分を逃がさず中にとどめるだけで、自分自身では吸収しません。和服の保管に総桐ダンスが重宝されるのは、密閉性と「吸湿性」を併せ持っているからなのです。

■害虫に気をつける。

衣服の害虫といえば、シミやカツオブシムシが代表的です。

虫は湿った場所が好きなので、湿度のコントロールだけでも大きく違ってきます。

また、シミなどは扁平な形ですので、入り込む隙間を作らないことも大切です。

防虫素材あるいは防虫剤の使用が一般的ですが、絹にやさしい方法を選択すべきです。

■伝統素材の工夫

伝統的な手作りの雛人形では、既に先人達の工夫が所々に生かされています。


まず最初にあげられるのが胴に使われる芯材です。

雛人形の芯材(胴)人形の胴の部分には、楠、桐、藺草(いぐさ)などが使われます。

いずれも古来から使われてきた、防虫効果がある素材です。

また、桐や藁には吸湿効果もあり、害虫の好む湿度を抑制します。


人形付属の桐箱次に、箱です。箱の機能としては湿度を一定に保つ性質、気密性といった性質が重要です。桐箪笥が古来から重宝されてきた理由がここにあります。

また、熱伝導率の低さと着火温度の高さも桐の大きな特徴です。熱伝導率の低さは、中の温度をある程度一定に保つことを、着火点の高さは、火事に強い(とはいっても限界はありますが)ことを意味します。


これら伝統素材で十分かといえば、そうとも言い切れません。何事にも100%はないというのも一つですが、それよりも現代の住宅構造の変化や気候の変化、冷暖房の普及といった要因で、以前より「極端」とか「急激」といった事象が増えてきたためです。

冷暖房をよく使う現代では、家の外と中の差だけでなく屋内でも温度差ができます。冬期は風邪の予防のため、加湿器などで部屋の湿度を高くすることもよく行われています。

昔ながらの木造住宅のように隙間が多い構造ならまだしも、最近の住宅はエネルギー効率をよくるすため密閉性が高く、結果、結露しやすくなっています。

昔は少なかった現象ですので、考慮しておくべき点でしょう。

■収納容器

桐箱桐箱が付属していれば、これを使用するのがベストです。

他の木製の箱でもある程度の吸湿性・通気性がありますので、素材や構造に応じて補助的に乾燥剤や防虫剤等を使用しましょう

紙製の箱もありますが、吸湿性と通気性に優れる一方、構造上隙間ができやすく虫が入り込みやすいこと、結露などで濡れると中に水分がしみこみやすいという点を考えると、別途木箱などを用意してそれに入れておくのが無難かもしれません。


コンパクト収納飾りなど、箱と飾り台を兼用するタイプの商品では、箱の素材も様々で、塗りが施されていたりするなど、構造や取扱い方が少々異なります。基本的には製作段階で十分考慮されていますが、説明書やお店で確認するのがよろしいかと存じます。


プラスチック容器やビニール袋の使用はおすすめできません。防虫という面では密閉性が有利ですが、水分が逃げないため、絹自身が吸い込んだ湿気が多いまま収納すると、しみや黄ばみの原因になりやすいからです

これらを使用せざるを得ない場合は、顔や手足に直接接触しないようティッシュなどで保護し、乾燥剤を多めに使うなどの工夫をして下さい。

■乾燥剤

湿気対策には乾燥剤の使用をおすすめします。防虫剤より重要といってよいかもしれません。


絹は非常に吸湿性の高い素材ですので、余計な水分を絹に吸わせないことで、カビの繁殖を抑えます。また反物の染色方法にもよりますが、湿気による色落ちや退色を防ぐ目的もあります。

カビの繁殖を抑えるには、温度を考慮する必要はありますが、おおよそ湿度60%より下に抑えるのがよいとされているようです。


市販の和装用のものが良いでしょう。防カビ兼用のものもあります。材質はシリカゲル系が一般ですが、食品に使われるような脱酸素剤のように、防虫や酸化による黄ばみを防ぐ機能をもつものもあります。

一点、気をつけるべきは、乾燥剤のキャパシティです。

乾燥剤はたいてい小さいパックになっていると思いますが、そのパック1つで吸収できる水分には上限があります。その上限を超えてしまうと、それ以上の水分は吸収できませんので、箱の素材や保管場所、通気性などの条件に応じて、量を調節するか、こまめに取り替えるようにする必要はあるでしょう。


保管している場所にも押し入れ用の大型乾燥剤・除湿剤を置くとか、梅雨時に除湿器を使うなど、家屋の構造や環境などを考慮してもう一手間かけておくことも大切です。

■防虫剤

自然の防虫素材の場合、湿度のコントロールさえうまくできれば、防虫剤を入れるとしても少なくてよいでしょう。和装のお店で手に入る防虫香や匂い袋を使うことも可能です。


防虫剤を使用するなら、天然の樟脳がおすすめです。天然の樟脳は匂いが気になったとしても、少し風にさらすだけで匂いが引きます。

ただ、樟脳と言っても「合成樟脳」は金糸、銀糸、金箔を痛める物がありますので成分には気をつけてください。天然樟脳でも直接触れると金属に反応します。

天然の樟脳の場合、大きさや量にもよりますが、効果は2〜6ヶ月くらいですので、定期的に取り替える必要があります。やや手間がかかるのがデメリットでしょうか。


異なる防虫剤の混在は絶対避けてください。また、取り替えのときに、別の種類のものを入れる場合も、薬剤は多少とも残留するため、一時的であっても混在と同じ状態になります。できればずっと同じ種類の物を使い続けるように心がけて下さい


市販品に「雛人形専用」防虫剤があります。金糸銀糸にも使える成分をつかって、人形を密封できる大きさのビニール袋を同梱したという意味合いでの「専用」商品で、防虫薬剤そのものは汎用品かそれに近いものです。

手に入れやすい、成分で悩まなくていいなどの利点があります。1年効果が継続する商品も多く、こまめに取り替える必要がないのもメリットです。また、梱包用の小物とセットになっていて、手軽に扱えるという商品もあります。

金襴をふんだんに使ったキラキラした衣装のお人形なら、金糸銀糸と反応しないこのような専用品のほうを優先したほうがよい場合もあります。

■収納の仕方

できるだけ乾燥している晴れの日に行います。冬は加湿器などで室内の湿度が高いことがありますので、そのあたりのことも気をつかって下さい。

風通しの良い場所で行うのがよいとされていますが、3月も下旬となると、春一番や黄砂がやってきます。とくに黄砂は最近飛来する量が増えていますので、時期には気をつけましょう。

早く片付けないと婚期が遅れるという言い伝えがあります。漫然と出したままの状態を続けることへの戒めの意味があったのかもしれませんが、迷信と言ってよいでしょう。

丁寧に扱うことの方を優先させて下さい





・手袋(購入時のプレゼント等で入手できます。顔など直接触らないために必要。)
・毛ばたき(購入時のプレゼント等で入手できます)
・和紙(または薄手のやわらかい紙)
・新聞紙または柔らかい緩衝材
・乾燥剤、防虫剤

※箱に付属してるものがあれば、それをお使い下さい。


まず、毛ばたきで、埃を丁寧に取り除きます。道具類もお掃除しましょう。
頭や手足にはできるだけ手で触れないように気をつけます。手袋推奨。
埃がかぶらないよう、お人形全体を紙で包みます。最低限、顔は保護して下さい。
防虫剤を入れる場合は、四隅など、人形に直接触れない場所に入れましょう。
箱とお人形の隙間に緩衝材を詰めます。箱の出し入れの際、お人形が中で動いて傷つくのを避けるためです。緩衝材は化学素材より自然素材、紙が良いでしょう。
緩衝材は入れすぎてお人形を圧迫しないようにして下さい。
緩衝材はやわらかく丸めた新聞紙でも十分です。新聞紙は吸湿性もよく、インクに防虫効果もあります。ただし、インクで汚れる可能性がありますので、直接人形を包むことは避けて下さい。
一つの箱に複数のお人形やお道具を入れる場合、柔らかい段ボールの切れ端などで仕切っても良いでしょう。
雪洞や桜橘などの飾り類で、紙や布を使っていたり、塗装のない物は防虫材を検討しておいてもいいかもしれません。
収納は必ず決まった箱に入れるよう心がけて下さい。
初めての年は、飾り付け時、収納時ともに写真など記録を取っておきましょう。次の年から役に立ちます。

なお、本編とは直接関係ないことですが、お子様が収納を手伝えるようになったら、一緒にお片付けをすることも大切だということに触れておきたいと思います。物を大事に扱うことを教えるだけでなく、お雛様、ひな祭りの意味や、材料に使われている素材や織物の由来など、年齢に応じた内容で少しずつ教えてあげてください。

■追記

お店によっては、無料または有料の設置サービスを行っているところがあります。

収納した物を飾り付けるまでの一通りの作業をプロが行ってくれますし、個々の商品の特性に応じた取扱いをするわけですから、これほど安心確実なものはありません。

その際、写真やビデオなどで記録をしておけば、次の年からの取扱いの強力な教科書になります。

もし機会があれば、このようなサービスを利用してもよいでしょう。

文責:Webmaster