天鳳堂資料室
注

雛人形は分業制

雛人形は各部品毎にそれ専門の職人さんがいます

頭を作る「頭師」、衣裳を着つける『着付師」あるいは「振付師」が代表的です。

他には、扇子や杓、雛道具などの小道具類、屏風や雪洞、人形の胴、一刀彫の手足など、さまざまな職人さんの手が加わっています。ある意味、日本の物作りが凝縮されているといってよいかもしれません。

「人形師」というのは、これら各パーツを総合して一つの飾りを作り上げる、いわばプロデューサーとかプランナーの役割の人を指します。個人の場合もあれば、工房全体やお店の場合もあります。

平安天鳳は着付師(振付師)でもあり、人形師でもあります。

前者の立場では、他の人形師さんへ衣裳を提供し、後者の立場では、ひな飾り(セット商品)等を企画・構成しています。

平安天鳳作ひな人形・全国取扱店リスト
天鳳堂直営店のご案内

正絹帯イメージ

オーダーメイドひな人形
個人向け・全国対応
帯持ち込み型オーダーメイド

フルオーダーは店舗HPにて

雛人形は一人一人のお守りです。

■はじめに

以下で述べることは、お雛様がもつ意義の、ひとつの側面にすぎません。

当資料室の「ひな祭りの歴史」「ひな人形の種類1」「ひな人形の種類2」をご覧頂くと、長い歴史の中で、形や意味の変遷があったことが見て取れます。

雛人形は歴史を重ねることによって多面的・重層的な意味を持つようになっています。 地域によって考え方も異なります。

雛人形を「お守り」とみても「縁起物」とみても、あるいはもっと割り切って「美術品」「インテリア」として扱っても、間違いだと断言することはできません。

過去に意味や形の変遷があったということは、現代は現代なりの意味があってもよいと考えることができます。一方、長い時間をかけた文化の蓄積、伝統を守っていくこともとても大事なことです。両者の兼ね合いやバランスは本当に悩ましいところです。

ご判断はおひとりおひとりの価値観、地域の習慣、ライフスタイル等に基づいて行っていただければ結構です。

■雛人形の原義

おひなさまには子供の身代わりとなって厄を受ける「お守り」の意味があります。

基本的には一人に一つずつ持つべきものとされます。
細かく正確に言うと、1人に殿・姫ペアの "一対"あるいは"一組" の意味です。)

これは、形代(かたしろ)に厄を移して流す、という陰陽道の考え方が基礎となっています。
(参考:ひな祭りの歴史

これに従うなら、姉妹(双子も同様です)で兼用したり、親子の間での譲渡や、妹に姉のお下がりを与えることは、「本来は」避けるべきものだということになります。

■お守りの本体は男雛と女雛の一対のお人形

以下「お守り」の観点から述べることとします。

さて、「譲渡は避けるべきもの」と言われても、現実問題としては、飾る場所や飾り方で悩むことになってしまいますから、「理想としては」といわざるを得ないのが正直なところでしょう。


ここで、少し視点を変えてみましょう。

「身代わりとなって厄を受ける」のは何か、を考えてみます。

屏風や雪洞でないことは明らかです。三人官女や五人囃子は親王飾りにはありませんし、段飾りでも省略される場合がよくみられます。となれば、残るのはお内裏様とお雛様ということになります。

つまり、「お守りの本体」は男雛と女雛の一対のお人形だということがわかります。

だとすれば、同じような段飾りを人数分揃えるようなことをしなくても、2人目からは内裏雛1組ずつを単品で追加していくだけでも良いわけです。

あとは、飾り方をどうするかという問題は残りますが、一人ずつにお雛様をあたえてやりたいとお考えの親御さんには、選択肢が増えたのではないかと思います。


あくまでも「男女一対のお人形」が主役ですので、まわりの飾りは、増やしても減らしても本来のお守りの役目については変わりがありません。

その時のお家の間取りや広さなどの条件に応じて、後でアップサイズ(ex.親王飾り→七段飾り)することやダウンサイズ(ex.七段飾り→親王飾り)することは、本質的には全く問題ありません。

はじめから段飾りにこだわらず、最初は親王飾りを選択して、その後の状況に応じて、人形や飾りを買い足していくというお客様も少なからずいらっしゃいます。

■1人で2組以上のお雛様を持つことはよいのか?

1人に1組あれば十分ですが、特別、複数のお雛様をもつことは避けることとはされていないようです。

お守りも複数持っている人もいるように、実際、お一人で2組目以降のお人形を買い足していくお客様もおいでになります。(美術品としてお考えの方やコレクターの方もいらっしゃいます。)

最初は小さなお雛様にして、余裕ができたら大きな雛人形にするということもできます。その際は、古いお雛様も新しいお雛様も一緒に飾るなど、平等に大事にしてあげて下さい。

■お役目が終わった雛人形は?

雛人形は個人のお守りですが、処分せずに代々伝えていっても必ずしも悪い物ではありません。実際、地方の古いお家ではそういう例もあります

譲ることと、代々伝えていくことは一応別のことです。そういう意味では『家』または『家系』のお守りと考える余地があるのかもしれません。


ただ、一般的には、お役目の終わった雛人形を持ち続けることも、お人形を処分することも、どちらも心理的に抵抗がある人が多いのは確かでしょう。

本来の意味から考えると「形代(かたしろ)」は「流す」べきものですが、古代の紙でできた人形ならまだしも、形も大きさも素材も異なる現代の雛人形は、流すべきものではなくなっています。環境保護の面からみても不適切です。

よく紹介されるのが、神社への奉納やお寺の供養祭といった手段です。

各地にそういった神社かお寺がありますので、そちらへお納めになるのが色々な面で安心だと思います。


お人形以外のお飾りや雛壇は、ご自身で処分されても特段問題にはならないと思いますが、材質や量などに応じて、お住まいの地域の条例などは確認しておく必要はあるでしょう。雛壇などの大きな物は別の用途でリサイクルしたり、譲渡するという選択肢もあります。


一つ付け加えておきます。海外では雛飾りは美術品、骨董品として見られるようですので、海外のお友達に譲るとか、海外のオークションに出すといった方法も考えられます。ご参考まで。

参考→「外国とひな祭り」

■人形が祟る?

上記の人形供養に関連して言及しておきます。

雛人形が祟るということはありませんし、魂が宿るということもありません。

雛人形は、いわば「人の形をしたお守り」で、災厄を人にかわって受ける物です。災厄のほうで間違えて人形を襲うように、わざわざ人に似せてあるのです。

神社のお守りが祟ると聞いたことがありますか? それと同じ事です。


とはいうものの、人の形をしたものに感情を動かされてしまうのは、人間のもつ性質のようですし、われわれ日本人は古来から「擬人化」が得意です。室町以降の「九十九神(つくもがみ)」信仰というものもありますから、人形に魂が宿ると考えてしまうのも無理はないかと思います。

それ故に、起源的に平安時代の神道や陰陽道の影響下にあった雛人形が、後にそれとは無関係なはずの仏教寺院で、人間同様に「供養」されるようになっていったのでしょう。

お寺の方も「物への感謝」と、それを「供養」という形で表現する「心のあり方」や「やさしさ」というのを、大切にしたいと思っているからこそ「供養」しているのだと思います。物を大切にすることは、功徳を積む行為と解釈することもできるからです。

このような日本人の「物を大事にする心」は、忘れずに大事にしていきたいものですね。

文責:Webmaster

加筆2008/12/19
修正2009/02/08

■追記

あるQ&Aサイトに当ページの文章(修正前のもの)の一部をそのまま使用した長文の回答があるようです。

Q&Aサイトの回答に当サイトの文章を引用していただくこと自体は全く構いません。

ただし、その際、文責を明確にするために、引用元・参考元として弊社名または該当ページ、あるいはリンクを併記していただければと存じます。

フェアユースへのご理解とご協力をお願い申し上げます。

なお、各ページへのリンクは自由です。事前事後にご連絡いただく必要はございません。

2009/1/16
追加修正2009/1/23