天鳳堂資料室
注

雛人形は分業制

雛人形は各部品毎にそれ専門の職人さんがいます。

頭を作る「頭師」、衣裳を着つける『着付師」あるいは「振付師」が代表的です。

他には、扇子や杓、雛道具などの小道具類、屏風や雪洞、人形の胴、一刀彫の手足など、さまざまな職人さんの手が加わっています。ある意味、日本の物作りが凝縮されているといってよいかもしれません。

「人形師」というのは、これら各パーツを総合して一つの飾りを作り上げる、いわばプロデューサーとかプランナーの役割の人を指します。個人の場合もあれば、工房全体やお店の場合もあります。

平安天鳳は着付師(振付師)でもあり、人形師でもあります。

前者の立場では、他の人形師さんへ衣裳を提供し、後者の立場では、ひな飾り(セット商品)等を企画・構成しています。

平安天鳳作ひな人形・全国取扱店リスト
天鳳堂直営店のご案内

チェックポイント其の壱:織物

■値段を左右するのは織物

ひな人形の価格の中で一番大きな割合を占めるのは織物です。 それだけに一番しっかり見ておきたい部分です。 天鳳堂では殿と姫の1組でおおむね2m弱使用します。

←高級品       普及品→
有職織物 帯地 帯柄 金彩友禅 金襴
有職(ゆうそく)織物は、平安時代に帝や貴族だけの装束に用いられた織物で、一般人は着られませんでした。無金の織物で、色や模様で位が決められていました。人形用では最高峰です。 和服の帯に使われるもので、生地が厚く、模様も浮き出てはっきりしています。良質の絹で作られることが多く、人形用としては高級品です。 柄を帯地より幅広に織ったものです。帯地との違いは横糸が細いことです。(帯地は体に巻き付けるため丈夫に作ってある)帯地の次くらいに位置します。 生地に描かれた絵柄は大量生産に向くよう、型を使用したものが多いようです。普及品でもややグレードの高いものに使われます。 キラキラ光っていますので分かりやすいはずです。江戸時代以降一般人の装束でも使われた金糸織りで色の数が多いほど高価になります。普及品で多く使われています。
参考:1mあたり
50,000~100,000円
参考:1mあたり
25,000~40,000円
参考:1mあたり
10,000~20,000円
参考:1mあたり
10,000~20,000円
参考:1mあたり
3,000~\8,000円

金襴というのはキラキラして派手ですので、お値段も高そうに一見感じるかもしれません。実は地味に見えるほうが格式・価格とも高い傾向にあります。

これら織物ですが、一般に反物や帯地として流通しているものを仕立てる場合もあれば、織元さんで人形専用に提供して下さる場合もあります。

注上の表は、あくまでもおおまかな「一般的・平均的な傾向」を表したものにすぎません。織物の価値は、時代性、希少性、製造・加工技術、染色、刺繍、デザイン、ブランド価値などの要素で大きく変わる複雑なものです。

例えば弊社の「瀞金本金箔雛」で使用した帯地の価格だけなら、最高級の有職織物に匹敵します。

ただし格式という点に限れば、歴史的経緯から、有職織物だけは「別格」になります。

【参考】天鳳堂「有職雛」「高級織物シリーズ

■色柄の好みは人それぞれ

人形の顔も同じですが、衣装の色や柄は個人の好みの要素が大きいので、一概に善し悪しを言い切ることはできません。

製作側としても、年間の製作量との兼ね合いもありますが、同じ織物でも違う色柄で作るなど、できるだけバリエーションを多くし、お客様の選択肢が多くなるよう努めています。

ただ、好みの色柄であっても、屏風など周りの飾りとのバランスも考慮しないと、長所を押さえてしまったり、短所を強調してしまったりすることもあるので、衣装だけではなく、飾り全体を見ることも大切です。

■素材は正絹が最高

蚕(かいこ)のマユから生糸をとる織物を正絹(しょうけん)といいます。いわゆる「シルク」ですね。

自然素材ゆえ、取扱いや保管に気をつかう必要があります。とりわけ、湿気と虫喰いへの対策が重要です。

しかしながら、人形そのものにも芯材に防虫効果があるものを使う工夫がされていますので、過度に難しく考える必要はないでしょう。

【参考】ひな人形の保存・保管

■伝統工芸品

古くから各地方で名産品として、生地、織物が生産され、愛されてきました。古来から伝わるもの、数百年前に発祥したもの、江戸時代に開発されたもの。あるいは明治以降に技術革新で生まれたものや復元されたものなどがあります。有職織物より高価なものも多く存在します。

【参考】天鳳堂「高級織物シリーズ

■ブランド品

茶の湯の世界では「名物裂」と呼ばれる織物が古くから珍重されてきましたが、これも一種のブランドということができるでしょう。

最近ですと、皇室献上織物を多く手掛ける龍村織物や川島織物が代表格です。和服がお好きな方はご存知の方も多いかと存じます。また、伝統工芸士で名匠といわれる方の作品も多く存在します。

【参考】天鳳堂「高級織物シリーズ

広い意味で「ブランド」といって思い浮かぶのが、服飾界のデザイナーズブランドでしょう。和装の分野になると、日本人のデザイナーが、古来の織物(例えば友禅など)のデザインを手掛けるというケースがほとんどで、性質上海外ブランドのものはまず存在しません。

ただ、本来の用途とは違う形で転用することはありえます。例えば弊社ではシャネルやルイヴィトンのスカーフを素材に人形を試作したことはあります。

【参考】天鳳堂「創美シリーズ


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