天鳳堂資料室
注

雛人形は分業制

雛人形は各部品毎にそれ専門の職人さんがいます。

頭を作る「頭師」、衣裳を着つける『着付師」あるいは「振付師」が代表的です。

他には、扇子や杓、雛道具などの小道具類、屏風や雪洞、人形の胴、一刀彫の手足など、さまざまな職人さんの手が加わっています。ある意味、日本の物作りが凝縮されているといってよいかもしれません。

「人形師」というのは、これら各パーツを総合して一つの飾りを作り上げる、いわばプロデューサーとかプランナーの役割の人を指します。個人の場合もあれば、工房全体やお店の場合もあります。

平安天鳳は着付師(振付師)でもあり、人形師でもあります。

前者の立場では、他の人形師さんへ衣裳を提供し、後者の立場では、ひな飾り(セット商品)等を企画・構成しています。

天鳳堂は人形師・平安天鳳作
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チェックポイント 其の貳:頭(かしら)または顔

■顔は選べるお店があります。

雛人形を選ぶ決め手は顔だとお考えの方も多いでしょう。衣装を基準に選ばれる方でも、顔も重要な要素であることは確かだと思われます。

次項ならびに右の注釈でも触れているとおり、雛人形の製作は分業形態で、お顔は頭師と呼ばれる職人さんが作っています。お人形がお店に並ぶ時は、基本的にはそのお店や人形師さんで選択したパーツの組み合わせで製品化されます。

パーツの組み合わせは、プロの視点で製品全体の雰囲気や格式、品質、価格帯など様々な要素を考慮して決定されるのが原則です。例外的に企画・工程上の理由や仕様が特殊であるため、組み合わせが固定される場合もあります。

勘の良い方はおわかりになったと思いますが、少なくとも製造元レベルでは、人形の各パーツの組み合わせは相対的なものであり、選択にはいちおうの自由度が存在します。

お店の中には、この点をお客様寄りに一歩進めて、お客様が顔を選べる(逆に言えば顔を基準に衣装を選ぶとも言えます)サービスを行っているところがあります。あるいはオーダーメイドのオプションという形で顔が選択可能なお店もあります。

ただ、これはあくまでも選択肢のひとつにすぎないという点だけ言及しておきます。選べることが即ち最高のサービスであるということではありません。プロの目を信頼するもよし、自分の好みを通すもよし、お客様が安心・満足できるお店やサービスを選んでいただければよろしいかと存じます。

■人形業界では頭(かしら)と呼びます。

人形のお顔は、人形業界では「頭(かしら)」と呼び、「頭師」いう専門の職人さんが作っています。工房によっては頭師さんの名前を作札に入れるところもあります。

埼玉県が職人さんの多い場所で、有名な頭師さんも多く輩出しています。次いで京都、静岡といったところでしょうか。

■頭のつくり

雛人形の頭(顔)のつくり

平額(ひらびたい)、釵子(さいし)は金属製です。プラスティックにメッキ加工してあるものは普及品です。

櫛は金属製のものと、木製(ツゲ等)のものがあります。高級品になると本つげに手書き絵が施されているものなどがあります。

髪型は江戸時代に流行した大垂髪(おおすべらかし)が主流で、現在でも皇室行事や結婚式などでもよくみられる髪型です。割り毛、垂らし毛と呼ばれる髪型の頭もあります。

髪の毛の素材は絹です。廉価品はナイロン等が使われるようです。

■桐塑頭(とうそがしら)・練頭(ねりがしら)

桐塑頭は、桐の粉を固め、ハマグリやカキの殻でできた胡粉で仕上げる伝統的な製法で作られた頭です。

型を全く使わないお頭ですので、一つ一つお顔や表情が微妙に異なります。質感にも独特のものがあり、歳を経るごとに深みが出てくるといわれますが、その分時間と費用がかかります。

一方、職人さんの減少・寡占化・高齢化という問題があります。

職人さんの減少は流通量に直結します。また、顔の善し悪しが職人さんの腕にかかってくることや、高齢化で現代風の顔や好みの流行についていける人が少なくなったりすることで、人気が特定の頭師さんに集まってしまい、さらに入手しにくくなるといった傾向もみられます。

■本頭(ほんがしら)・石膏頭(せっこうがしら)

石膏を使用して、型を使って成形し、胡粉で仕上げるタイプの頭です。一番流通しているのがこの種の頭です。

型を使うとはいっても、工場での大量生産というイメージは間違いです。表情のばらつきを押さえたり、良い表情のものを安定して生産する目的で使われており、型作りから塗りや抜き(目や口を彫る工程)に至るまで、伝統的な手作業で行われています。

桐塑頭と比べて、流通量が多く、安定していますし、表情や品質も遜色ありません。カタログやチラシの写真と現物との違いが小さいので、お客様もお店側も安心できるという利点もあります。

さらに、若い頭師さんや女性の頭師さん、他の美術工芸の分野から参入した方など、職人さんだけではなく、お顔そのものもバラエティに富んでいます。流通量の面ともあわせて、お気に入りの顔に出会える確率が高い、あるいは選択肢が広いというメリットも見逃せません。

事実上のスタンダードと言ってよいでしょう。

ただし、1点ご注意を。中国製が流通しているという話(倒産・廃業した工房から型が流出したとも噂されます)があります。現在のところ、肌や髪の毛の質感、生え際や眉毛といった筆書き部分など、品質は素人目にも明らかに判る程度に良くないようです。信用ある人形専門店ではまず取り扱いません。

■チェックポイント

チェックポイントは次の通りです。

  • 店頭・カタログ等で「桐塑頭」か「本頭」使用と明記されていること。
  • 桐塑頭は好みと入手難度の問題だけです。作家さんをよく研究しましょう。
  • 髪飾り(平額や釵子等)がプラスティック製のものは廉価品です。
  • 髪の毛は絹。ナイロンなど合成繊維のものは廉価品です。
  • 口の中もきちんと彫ってあること。

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