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ひな人形の種類(1) 姿・形からの視点

■古い形

流し雛の例古い形に一番近いのが流し雛かと思われます。

ひな祭りの歴史」でも見た通り、ひな祭りは、もともと穢れを人形(ひとかた/かたしろ)に託して水に流す風習が源流になりますので、流し雛はもっとも古い形の名残を残すおひな様だといえるでしょう。

源氏物語の須磨の巻に、上巳に人形を海に流す記述があることは有名です。

現在、下賀茂神社の流し雛をはじめ、各地で行われていますが、これらは比較的新しく、戦後に再現されたり復活したりしたところも多いようです。

■立雛と座雛

立ち雛(皇太子モデル)の例おひな様と聞いて思い浮かべるのは、まず、畳の上に「座っている」おひな様だと思います。

姿勢については、元が「ひとかた/かたしろ」であることを思い浮かべると、立雛の方が時代が古いことは想像しやすいと思います。

江戸時代の初期までには立雛があったそうですが、「紙」で出来ていたといいますから、「ひとかた/かたしろ」の名残が強いのがわかります。時代が下るにつれ、内裏の生活を模した座雛が主流になっていきます。

最近、立っている姿の雛人形を見かける事が多くなりましたが、上記の古い「立雛」とは異なり、座っていた雛人形を立たせたという「姿勢の進化」の意味合いが強く、呼び方は同じでも「新しい」立雛というべきかもしれません。

■土人形、木目込み人形、吊し雛

ひな人形はいろいろな意味で江戸時代に大きく発展しました。江戸時代は地方の名産を育んだ時代でもあったため、ひな人形にも地域特有のもの、あるいは特定の地域から発祥し各地に伝播していったものが現れる事になります。

ひな人形が豪華さや精密さを競っていた一方で、非常に素朴ながら味わいのある人形が多く作られました。

代表的なものは「土人形」、「木目込み人形」そして「吊し雛」でしょう。木目込み雛人形の例1

土人形は京都伏見、三河、信濃あたりが有名でしょうか。三河の場合、上質の粘土が産出し、常滑や瀬戸などの焼き物の町にも近く、特産の三州瓦、とりわけ神社仏閣でよく見る鬼瓦の産地であるため職人も多く、土人形がつくられるようになりました。信濃の中野(長野県中野市)の土人形の源泉の一つ(もうひとつは京都)と言われてます。

木目込み雛人形の例2「木目込み人形」は賀茂人形とも呼ばれ、京都の下賀茂神社に仕えた高橋忠重に始まるとされる木製または桐塑製の人形です。その後江戸に伝わり、江戸木目込み人形として独自の発展を遂げます。

木目込み人形はファンが多く、製作を趣味にしている人もいますし、カルチャーセンターなどでも教えられています。

独特の形態としては、吊す形のお雛様があげられます。

伊豆の稲取地域の「つるし雛」、九州の柳川の「さげもん」、山形の酒田の「傘福」です(異なる呼称もあります)。伊豆が発祥とされているようです。

ぬいぐるみの縁起物を一つのひもにいくつか結んで一列とし、それを環状に吊す(山形の場合は傘状なので「傘福」の名)、あるいは横に並べて吊します。

吊す縁起物は地方により異なりますが、鞠、金魚、猿、蛤人形をはじめ多くのものがあり、ひとつひとつ意味がこめられています。

いずれも当時、高価な雛飾りを買えるほど裕福でない家庭が多く、子供のためにできる範囲のお祝いをしてあげようとの気持ちから、まわりにある材料から手縫いで作ったお飾りです。本当に心がこもっていることがわかるお祝いの良い例でしょう。

どの地域のものも、一部でほそぼそと行われていたり、消えかかっていたりしましたが、地元の方の努力で、現在では日本三大吊し雛と称されるまでとなり、他の地方にも知られはじめています。